プロゲーマーとしてもっとも有名なウメハラ選手が、海外の大会で話題になっています。
その理由は、彼が使用していたコントローラー「ヒットボックス(hitBOX)」の禁止です。
そこでこの記事では、禁止された理由、その経緯や問題点などを紹介したいと思います!
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このページの目次
ウメハラ選手の「ヒットボックス(hitBOX)」が使用禁止になった経緯とは
引用:YouTube
事件は、2019年5月24日にアメリカで行われた、「Combo Breaker 2019」という大会で起きました。
同大会に出場したウメハラ選手は、かなり特殊なコントローラーである「ヒットボックス(hitBOX)」の亜種、通称「ガフロコン」を持参します。
なお、ウメハラ選手は大会前、きちんと運営やカプコンに「ガフロコンを使用してもOK」ということを確認しました。
このあたり、さすがというかしっかりしていますよね。
しかし大会当日になって、「ウメハラ選手の使用するコントローラーは使用禁止」というアナウンスが。
やむなく、使用を認められた一般的なコントローラーで試合に臨みます。
ウメハラ選手はこの大会に向けて「hitBOX」の練習に明け暮れていましたが、その腕前を披露することは叶いませんでした。
そもそも「ヒットボックス(hitBOX)」や「ガフロコン」ってなに?問題点は?
引用:https://www.yodobashi.com/
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「ヒットボックス(hitBOX)」ってどんなコントローラー?
では、そもそもこの「hitBOX」というのは、どういったコントローラーなのでしょうか?
「格闘ゲームのコントローラー」と聞くと、多くの人は下のようなものを想像すると思います。
引用:amazon
一般的なアケコン「ファイティングエッジ刃」
左のレバー(スティック)でキャラを操作し、右のボタンで技を繰り出す。
この記事を見ている人なら、誰でも1度は触ったことがあるのではないでしょうか?
しかし今回騒動になった「hitBOX」は、初めて見るとかなり驚くと思います。
それがコチラ↓
引用:https://www.yodobashi.com/
...スティックがない!
そう、「hitBOX」は、移動を含むすべての操作をボタンでこなすという、かなり特殊なコントローラーなのです。
上の画像にある赤いボタンが、通常のコントローラー、いわゆる「アケコン(アーケードコントローラー)」におけるスティックの役割を果たします。
3つ並んでいるのが、左から順に「左移動」「しゃがみ」「右移動」に対応。
左手の薬指、中指、人差し指で操作します。
そして少し離れた場所に独立した赤いボタンが、「ジャンプ」に対応。
感覚としては、キーボード操作のFPSに似ていますね。
最近では、このコントローラーが人気であり、大会でも使用者が増えている模様。
なぜなら、スティックで操作するよりもはるかに速くコマンドを入力できるからです。
格闘ゲームの経験がある人は、「タメキャラ」を想像してみてください。
代表的なキャラは、『ストリートファイター』シリーズの「ガイル」です。
彼の技である「ソニックブーム」は、「←(タメ) → +攻撃ボタン」というコマンド入力で発動します(キャラが右向きの時)。
スティックの場合、左に倒してから、素早く右に移動させつつ攻撃ボタンを同時押しします。
しかし「ヒットボックス」では、「薬指のボタンを押した後、人指し指のボタンを押しながら攻撃」で発動可能。
手首でスティックを操作しなければいけない「アケコン」に比べると、かなりの差が生まれます。
「ヒットボックス(hitBOX)」の問題点や禁止の理由は?
では、なぜこのコントローラーが禁止されたのか。
その理由は、「コマンド入力が速いから」と言うわけではありません。
「ヒットボックス」最大の問題点は、移動ボタンの「同時押し」にあります。
スティックで操作する場合、移動コマンドは必ず1方向にしか入力できません。
当然ですよね。
「左方向を入力したまま、右方向」なんて動き、スティックではどうやっても実現不可能です。
しかし、「ヒットボックス」は違います。
薬指と人差し指のボタンを同時に押すと、「左移動」と「右移動」を同時に入力することが可能です。
もちろん、ゲーム側ではこのような入力には対応していません。
(もともと想定していなかったので当たり前ですが。)
そのため、「ヒットボックス」には、「同時押し」された際にコントローラー内部で、ゲーム側にどのコマンドを送信するかがプログラムされています。
純正の「ヒットボックス」は、「左移動」と「右移動」が同時押しされた場合、「ニュートラル」が送信されます。
つまり、スティックで言うところの「どの方向にも倒していない状態」となるわけですね。
しかし、ウメハラ選手が使用していた「ガフロコン」は、「左移動」と「右移動」が同時押しされると、「後に押されたコマンドが有効」になります。
これはどういうことかというと、先ほどの「ガイル」を考えればわかりやすいでしょう。
ソニックブームは、左移動(薬指のボタン)を押したまま、右移動(人差し指のボタン)を押せば発動できます。
薬指を離す必要すらないわけですね。
禁止されたのは「ヒットボックス」ではなく「ガフロコン」
ちなみに、今回の騒動で禁止されたのは、「ヒットボックス」そのものではなく、「ガフロコン」でした。
大会では、純正の「ヒットボックス」は使用を認めています。
先ほども書きましたが、「ガフロコン」は純正の「ヒットボックス」を改造して作られたもの。
(海外のガフロ選手が設計したためそう呼ばれている)
「同時押し」に対するコントローラー内部のプログラムを問題視してのことだと言われています。
しかし、実はこのプログラム、使用者が簡単に変更することが可能。
「ガフロコン」を、「ヒットボックス」仕様に変更することは容易です。
しかも、「ヒットボックス」も「ガフロコン」と同じプログラムに変えることができます。
こう考えると、「ガフロコン」だけを禁止するのはなんだかおかしい気がしますよね。
そもそもウメハラ選手は、事前に当該コントローラーの使用がOKであることを確認しています。
個人的な考えですが、「世界的に知名度の高いウメハラ選手が特殊なコントローラーを使う」という事態を避けたかったのではないか、とすら思ってしまいます。
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ウメハラ選手の対応について
引用:YouTube
結局、この大会でウメハラ選手は、通常の「アケコン」を使用しました。
ちなみに結果は、17位タイとあまり振るわなかったようです...。
大会前には、「ガフロコン」で必死に練習していたので、そのせいもあるかもしれません。
しかし、ウメハラ選手的には、「うれしい結果」だったのではないでしょうか?
ヒットボックス練習してるウメハラさん見ると元気出る
※25秒~音量注意 pic.twitter.com/JokmSbFwKy
— みずたまり (@JhTJs355WDIYtJR) 2019年5月22日
というのも、ウメハラ選手は以前より、「ヒットボックス」に反対しているようでした。
「ヒットボックスはアケコンよりも優秀なため、使用を禁止するべき。」
「今の格ゲー大会はルールがザルで、コントローラーなどは統一させる必要がある。」
というような意見を、自身の動画で訴えています。
いや、そんなこと言いながら自分も使ってるじゃん!と言いたくなるかもしれませんが、そこはウメハラ選手にも考えがあった模様。
「ルールがザルなら、それをどんどん利用するべき。」
「粗をついて行かないと、ルールの改正に繋がらない。」
とも発言しています。
このため、「ガフロコン」限定ではありましたが、今回の禁止は、むしろウメハラ選手が望んでいたような結果だったのではないでしょうか?
もちろん、「ヒットボックス」全体を禁止して欲しいと考えているはずであり、今回の処置も曖昧な理由で線引きがはっきりしていないため、完全には納得されていないかもしれません。
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eスポーツは、まだまだルールが曖昧な部分があります。
海外でも話題となっているこの問題、今後のeスポーツにおける課題となりそうですね。
...ちなみにウメハラ選手ですが、大会最終日に、メーカーから純正の「ヒットボックス」をプレゼントされた模様。
しばらくは、コチラを使ってみる気があるようです。
ヒットボックスもらった!
これで頑張るか!? pic.twitter.com/54s5JFCzI2— 梅原大吾 (@daigothebeastJP) 2019年5月26日