最近は、日本でもeスポーツが盛り上がりを見せています。
しかし、世界に比べると、まだまだ規模が小さいように感じてしまいますよね。
では、eスポーツの市場規模において、日本と世界にはどれだけの差があるのでしょうか?
具体的な統計データから、日本が抱える課題を読み解いてみました!
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このページの目次
eスポーツの市場規模はどのくらいなのか?統計データを探してみた
さて、まずは市場規模のデータです。
これは、総務省が2018年3月にまとめた、『eスポーツ産業に関する調査研究報告書』を使用したいと思います。
この報告書は、日本や世界のeスポーツにかかわる、2017年度の統計がまとめられています。
国内外の様々な調査会社や関係会社(日本のゲーム雑誌「ファミ通」)などが調査したデータを使用。
また、関連企業や、5~59歳を対象に独自のアンケートもとっています。
かなりの情報量で、80ページにおよぶ報告書の中には、近年人気のゲームタイトルや、国内外の主要大会の賞金までまとめられています。
今回は、この報告書にある、「国内市場規模・オーディエンス市場規模」と「海外市場規模・オーディエンス市場規模」からピックアップしました。
※オーディエンス市場規模:視聴者数のこと。どれくらいの人数が興味を持っているか?を調べるのに使用
ちなみに、総務省はほかにも、「携帯電話の平均使用年数」や「自動車の買い替え時期」など、様々な調査結果を公開しています。
いろいろな分野の分析に役立つほか、暇つぶしに眺めるだけでも、結構楽しめるのでオススメです。
eスポーツの市場規模【日本編】
日本のeスポーツ認知度 引用:eスポーツ産業に関する調査研究報告書(総務省)
最初に日本の市場規模です。
調査によると、2017年度における国内のeスポーツ市場規模は、5億円未満と試算されています。
同年の視聴者数は、およそ158万人でした。
市場規模の内訳は、次のとおりです。
・スポンサー、広告収入 :約1.3億円
・チケット収入 :約1.2億円
・大会賞金 :約0.9億円
・グッズ、著作権、放映権収入 :約0.3億円
アンケートへの未回答を考慮しても、5億円未満である、との見方です。
こうしてみると、グッズなどの売り上げがあまりよろしくないことがわかります。
野球やサッカーだと、応援しているチームのユニフォームなどがかなり売れるようですが、eスポーツとなるとそうでもないようです。
「会場限定 パズドラTシャツ」とか、たしかにそこまで売れそうにないですね...。
さらに、eスポーツの認知に関するアンケートの結果、次のような結果が出ています。
・eスポーツ大会があるのを聞いたことがある : 9%
・直接会場で、あるいは動画で大会を視聴したことがある : 2%
・プレイヤーや監督として、大会に参加したことがある : 1%
・どれにも当てはまらない :88%
つまり、「eスポーツに大会があることを知らない」という人がほとんどなのです。
しかも、知っていても見たことがあるのは全体の2%と、信じられないほど低い値といえます。
最近は認知度が上がってきているとはいえ、まだまだ理解や宣伝が足りないようですね...。
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eスポーツの市場規模【世界編】
世界の市場規模推移(2018年度以降は予想) 引用:eスポーツ産業に関する調査研究報告書(総務省)
次に、世界の市場規模を見てみましょう。
同じく総務省がまとめた報告書によると、2017年度の市場規模はおよそ700億円。
視聴者数は、3億3,500万人とのことでした。
世界全体で見てるので当然といえばそれまでなのですが、市場規模は日本の140倍以上と、桁違いのスケールです。
なんというか、もはや誤差のレベルですね。
アメリカやヨーロッパといった、人口の多い国が底上げしてる部分も大きいと思います。
しかし、視聴者数では韓国などが大きく貢献しています。
韓国は、「eスポーツ大国」といわれるほど、国を挙げてeスポーツに力を入れています。
テレビでも頻繁に大会の様子や特集などが組まれており、「将来なりたい職業」として、プロゲーマーが上位に入るほどです。
eスポーツに対する考え方などは国によって大きく違います。
しかし、その中でも日本は、ゲーム開発の先進国でありながら、eスポーツでは大きく遅れをとってしまっているようです。
日本でeスポーツの市場規模が小さい理由
ではなぜ、日本はeスポーツの市場規模が小さいのでしょうか?
「体を動かさないゲームを、スポーツとは認めない!」「ゲームは教育に悪い」など、古い考え方やイメージにとらわれている人が多い、というのも理由のひとつです。
しかしもうひとつ、重要な問題があります。
「法律」です。
実は、日本はeスポーツの大会を開催するのに、結構なハードルがあります。
大会を大きく盛り上げるのは、やはり優勝賞金ですよね。
賞金が高額な海外の大会は、開催前から大きな話題となるほどです。
しかし、日本の大会は賞金額が大きくありません。
これは、法律が関係しています。
たとえば、ゲーム会社が大会を開催したとします。
このとき、このゲーム会社が賞金を支払う場合、「不当景品類及び不当表示防止法」に抵触する恐れがあります。
簡単に言うと、「大会で優勝すればお金がもらえるよ!だからこのゲームを買って練習してね!」という『宣伝行為』とみなされてしまう可能性があるのです。
大会で勝つためには練習が必要です。
練習するにはゲームを買わなければなりません。
つまり、賞金を餌にゲームの宣伝をしていることになります。
こうなると、賞金の上限額が法律で定められてしまうのです。
ちょっとオーバーな解釈といえなくもないですよね...。
もともとは、景品で客寄せや購入を促すのを防止するための法律ですが、eスポーツの大会にとっては悩みの種となってしまいました。
これを回避するためには、ゲーム会社以外が賞金を出す必要があります。
つまり、高額の賞金を出してくれるスポンサーを用意しなければなりません。
また、スマホなどの「基本無料」系のゲームは、「練習のためにゲームを買う」という必要がないため、見逃されると考えられています。
「課金」は、あくまでもゲームを加速させるためのもの、という解釈のようです。
日本の法律ってややこしいですね...。
ほかにも、「eBASEBALLパワプロプロリーグ」のように、出場日数によって賞金を出す、いわば「給料」のような形をとる方法もあります。
ちなみに、大会出場者から出場料を取って賞金にまわすと、「賭博」つまり賭け事に該当するため、普通に大変なことになります。
現在、日本のeスポーツ大会運営者は、必死に法律の抜け穴を探りながら、何とか賞金を高額にしようとがんばってくれているのです。
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eスポーツの市場規模まとめ
eスポーツの市場規模につて紹介しました。
日本は世界に比べると、まだまだスケールが小さいといわざるを得ません。
この状態から抜け出すには、国民全体の理解や国の援助、そして何よりも法律の見直しや整理が必要です。
世界で「eスポーツをオリンピックの正式種目に!」という動きがある中で、この状態を放置するべきではないでしょう。
世界に引けを取らない市場規模まで、一刻も早く拡大させていく必要があると考えます。