オンラインゲームは多数のプレイヤーが同時にプレイするため、時として様々な事件が起こります。
この記事では、日本や世界各国で巻き起こってきた事件の中から、特に面白かったものを5事例紹介。
各事件の詳しい解説や、実際の動画も入手しました!
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このページの目次
【PSO2】HDDバースト事件
引用:http://pso2.jp/players/
まずは運営の不備によって引き起こされた事件を紹介します。
「PSO2(ファンタシースターオンライン2)」は、2012年7月にサービスが開始した、TPSアクションゲームです。
「宇宙を舞台にしたモンスターハンター」といったゲームシステムで、基本料金無料だったこともあり、多くのプレイヤーがゲームを楽しんでいました(現在も変わらずにプレイ可能)。
しかし、2013年9月4日、事件は起こります。
この日リリースされたアップデートプログラムに致命的なバグがあり、当日の11:00~22:17にアップデートした場合、「HDD(ハードディスク)内のデータを消去する」という不具合が発生。
つまり、アップデートによってパソコン内のゲームとは無関係なデータが勝手に消えてしまうというものでした。
削除されるフォルダや階層などは一切公開されていなかったため、当時のプレイヤーは必死にHDDをチェックしたことでしょう。
実は、私も当時このゲームをプレイしていたため、相当焦ったことを記憶しています。
幸い私は当日にアップデートをしなかったため、この不具合を免れることができました。
しかし、実際には20,714人ものプレイヤーが被害を受け、Windowsが起動できない、大切な写真データが失われた、などと報告されています。
運営は後日、この不具合に対してお詫びと対応を行いましたが、その内容が結構微妙で、
・5,000円分相当の金券 or ゲーム内で使用できる有料ポイント約1万円分
・個別対応
というものでした。
HDDのデータが飛んで5,000円は安すぎますし、ウワサでは「個別対応」も「OSの再インストール」程度のものだったようです。
もちろん、失われたデータは戻ってこなかったでしょう。
あの日、アップデートしなくて本当によかったと、今でも思っています。
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【WoW】リロイ・ジェンキンスの特攻【動画、プレイヤーの顔画像あり】
中の人(Ben Schulz氏)のご尊顔 すっかり有名人である
引用:http://www.flickriver.com/photos/laughingsquid/2440584201/
続いては、とある1人のプレイヤーが引き起こした事件です。
被害が小さく、「事件」というよりも「ハプニング」に近いものですが、インパクトが強く私も大好きなため紹介させていただきます。
「WoW(World of Warcraft:ワールドオブウォークラフト)」は、ファンタジー世界を舞台としたMMORPGです。
人気カードゲーム「ハースストーン」と同じ「ブリザード」が開発や運営をしており、世界観も共有しています。
このゲームでも特に有名なプレイヤーキャラクターが、リロイ・ジェンキンス(Leeroy Jenkins)。
※なお、プレイヤーの本名はベン・シュルツ(Ben Schulz)
リロイは、とあるボスモンスターからドロップするレアな鎧を入手するため、パーティーとダンジョンに挑みました。
このダンジョンでは、ボスの手前に「チビドラゴンの卵」が無数に配置されています。
この卵は触れることでドラゴンが孵化し、無用な戦闘を強いられることに。
そのため、安全にボスまでたどり着くには、卵を避けて進む必要がありました。
パーティーは、そのことを周知し、それぞれの役割などを確認するための作戦会議を行います。
しかし、あろうことか当のリロイ本人は、「チキンを温めなおすため」に席をはずしており、作戦をまったく聞いていませんでした。
そしてチキンが十分に温まった頃、リロイが戻ります。
リロイ「もういいだろ!はじめようぜ...リロォォォォォォイ ジェンキィィィンス!!!」
パーティー「 (゜Д゜)」
パーティー「...!!」
パーティー「なにやってっんだあいつ!助けに行くぞ!」
しかしダンジョンはリロイの踏み荒らした卵によっておびただしい数のチビドラゴンが。
パーティーも連携が取れず、見事全滅しました。
この凶行についてパーティーに問いただされたリロイは、
「でも、俺にはチキンがあるよ」
と堂々の釈明。
この動画が反響を呼び、リロイは一躍有名人となりました。
これによって、「WoW」の公式イベントに呼ばれる、ゲーム内にNPCとして登場するなど、運営に優遇されています。
なお、先述した同社開発の「ハースストーン」にも、彼をモデルにしたカードが。
ハースストーン版「リロイ・ジェンキンス」
引用:https://wiki.denfaminicogamer.jp/hearthstone/
効果は、「突撃、雄叫び(相手フィールドに2体のチビドラゴンを召喚)」というもの。
突撃は召喚したターンに攻撃が可能になる効果で、リロイの攻撃力もあいまってなかなか強力なカードです。
しかし、雄叫びによって召喚と同時に相手陣地にチビドラゴンを召喚するため、「次のターンにはチビドラゴンに殺される」という状況を自ら作ってしまうカードでもあります。
原作再現が完璧すぎる...。
この辺りは、日本では起こりづらそうというか、海外の自由なノリを感じますね。
なお、各ボイスは下記の通り。
・召喚時:「リロォォォォォォイ ジェンキィィィンス!!!」
・攻撃時:「もういいだろ!はじめようぜ」
・死亡時:「うおぉ! チキンうめぇ」
と、ほぼそのままです(英語版はもっとそのまま)。
愛されるゲームプレイっていいですよね。
もっとも、同じパーティーでこれやられたらさすがにキレそうですが。
【WoW】穢れた血事件
「穢れた血」の感染で死体が転がる街中
引用:Twitter
同じく「WoW」では、非常に興味深いとされる事件も。
レイドボスである「血神ハッカル」は、「穢れた血(Corrupted Blood)」というスキルを持っています。
このスキルの効果は、「10秒間、毎秒200ダメージを与える。また、近くにいるキャラクターにも感染し、解除不能」というもの。
このダンジョンに挑むプレイヤーの多くは、体力が6,000前後だったといわれており、大体30%のダメージを食らうという、比較的うっとうしいスキルです。
とはいえ、歴戦のプレイヤーであれば、十分に対処できるレベルといえます。
そしてこのスキルは、ボスのいるダンジョン限定の効果だったため、ダンジョンを出れば解除される...はずでした。
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感染の始まりと拡大
このゲームには、特定のクラスのみ使役できるペットがいます。
このペットは任意のタイミングで召喚や召喚解除ができるのですが、ここに落とし穴がありました。
召喚したペットが「穢れた血」を受け、効果時間中に召喚解除すると、その効果がペットに残ってしまうのです。
つまり、ダンジョンの外で再びペットを召喚することで、「穢れた血」の効果をダンジョン外に持ち出すことができてしまいました。
これが発端となり、大きな事件へと繋がります。
偶然なのか故意なのか、「穢れた血」は、プレイヤーが大量に待機する大都市に持ち込まれました。
「穢れた血」の効果時間はわずか10秒間でしたが、プレイヤーがひしめき合う大都市では次々と感染が拡大します。
さらに、「NPC扱いであるペットに感染する」という性質から、町のNPCも同じく感染することに。
しかしNPCは、自動的に大幅な体力回復をするため、死にはいたりません。
そのかわり、「死なない感染源」として、「穢れた血」を広める形となってしまいました。
「穢れた血」は、高レベルプレイヤーにとっては何とかなるダメージだったものの、始めたばかりのプレイヤーにとっては甚大なダメージです。
さらに、リスポーン(復活)地点でもこの効果が蔓延したため、「穢れた血」で死ぬ→復活する→復活地点で再度「穢れた血」に感染→死ぬ→...といった、無限ループも見られました。
運営の対応
「WoW」が人気でプレイヤーも多数いたことなどから、運営はサーバーの停止(ゲームをプレイできないようにする)を避けました。
そのかわり、低レベルプレイヤーは他の町に避難する、感染源となる高レベルプレイヤーは移動しない、といったことをアナウンスし、自然沈下を目指します。
しかし、混乱によって指示に従わないもの、面白がって避難先の町にも「穢れた血」を持ち込むなどのテロ行為に走るものなどが続発しました。
これによってゲームは完全に収拾がつかないものになり、運営はやむなくサーバーを停止し、このバグを修正することに。
現実の伝染病に似ている?ニュースや論文の対象にまで!
この事件は、「ゲーム内での伝染病の蔓延」ということで、海外のニュースにも取り上げられました。
それだけではありません。
感染状況や人々の行動が、現実の伝染病と似ていることから、研究論文の対象にまでなりました。
たとえば、鳥インフルエンザがいい例です。
動物を感染源とし、そこから人に感染、さらに大都市でパンデミック状態になるなど、ゲームでありながら非常に優れたサンプルといわれています。
また、プレイヤーの中には、感染者を回復しようとするもの、死を悟って感染者同士で寄り添うものなど、やはり実際のパンデミック時に人間が取るであろう行動を起こす人たちもいました。
このことから、行動心理学の観点からも注目されています。
ゲームの出来事を、ただの笑い話などで終わらせず、しっかりと現実世界に落とし込むのがすごいですね。
この論文、ぜひとも読んでみたいです。
※ちなみにこの事件もハースストーンでカード化されています(魂剥ぐロア・ハッカー)
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【MoE】血のバレンタイン事件
引用:https://kussun.jp/moe/diary/2005-02.html
血つながりで、「MoE(Master of Epic:マスターオブエピック)」というMMORPGで起こった「血のバレンタイン事件」も紹介したいと思います。
事件が起こったのは、2005年2月14日。
運営はこの日『オリアクスとルーチェの「恋のドキ☆ドキ Attack!~バレンタイン大作戦~」』というイベントを実施しました。
"Attack!"という字面から、既にいやな予感しかしません。
なお「MoE」には、「非戦闘地帯(プレイヤー同士の戦闘禁止)」と、「戦闘地帯(プレイヤー同士の戦闘推奨)」があったことを事前に補足しておきます。
このイベントは、ざっくりいうと「非戦闘地帯プレイヤーで、戦闘地帯プレイヤーに愛を伝えよう!」といったニュアンスでアナウンスされました。
このため、普段「非戦闘地帯」で生活する生産職系のプレイヤー達は、チョコレート生産アイテムを大量に持った状態(料理をするつもりだったので、武器や鎧はほとんど持っていなかった)で「戦闘地帯」に移動します。
そこでチョコレート作りや合コンのようなことをしていましたが、運営の指示によって「戦闘地帯」のプレイヤー(ゴリゴリの戦闘職)がイベント会場を襲撃。
わずか1時間ほどで、「非戦闘地帯」のプレイヤーはほぼ全員が虐殺されました。
「愛を伝えに行ったら皆殺しにされた」という状況に大きなショックを受けた多くの「非戦闘地帯」プレイヤーたちは、これをきっかけとして大量に引退。
「MoE」のプレイヤー人数を大きく減らす原因となりました。
この事件、そもそも運営が何をしたかったのかがわかりません。
本来ならば、イベント中は戦闘を禁止するようにしておくべきでしょう。
(実際には、「非戦闘地帯」vs「戦闘地帯」の大規模戦闘をもくろんでいた模様)
そうでなくとも「不幸にも襲われてしまった」のであれば、まだギリギリ納得がいくレベルかもしれません。
しかし、あろうことか運営自ら「虐殺を先導する」という、鬼畜以外の何物でもない行動を取っています。
プレイヤーの減少はゲームの過疎化に繋がるため、運営としてもマイナスでしかなかったはずです。
まるでハーメルンの笛吹きに導かれるように姿を消したプレイヤーたちが、不憫で仕方ありません。
※ちなみに、このイベントは翌日も行われましたが、その際に運営は「いやぁ、昨日はヒドい目にあったな」などと発言しました。
どの口が言ってるんだよ...
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【EVE】B-R5RBの大虐殺
引用:https://www.gamespark.jp/
最後は、「オンラインゲームの事件」として1番有名といわれる「B-R5RBの大虐殺」です。
「EVE(EVE ONLINE:イブオンライン)」は、宇宙を舞台にした大規模なMMORPG。
戦闘はもちろん、採掘や生産で資源や商品を入手し、輸出入でお金を稼ぐといった、幅広いプレイスタイルが特徴です。
また、商品を搬送中の宇宙船を襲って金品を強奪する、「宇宙海賊」のようなロールプレイも可能。
こういう悪役ロールは胸が躍りますね。
...やられる側としてはフラストレーションしか感じないでしょうが。
そんな「EVE」は、様々な派閥があるため、事件もたびたび起こります。
現在でも語り継がれる「B-R5RBの大虐殺」は、2014年1月27日に起こった、「Clusterfuck Coalition & Russian連合(以下、ロシア連合)」と「N3 & Pandemic Legion(以下、アメリカ連合)」による大規模戦争のこと。
戦争の発端は、たった1人のプレイヤーが犯した「うっかりミス」が始まりです。
「B-R5RB」は、アメリカ連合が支配する星系でした。
このゲームでは、星系の支配を維持するために、定期的に税金を支払う必要があります。
しかし、この管理を任されていたあるプレイヤーが、税金を収め忘れてしまいました。
これによって、アメリカ連合の「B-R5RB」支配権が消失。
中立状態となります。
ミスに気付いたプレイヤーは、バレないようにこっそりと税金を納めようとしますが、ロシア連合の偵察機に見つかってしまいました。
これによって、ロシア連合は大規模な進軍を開始。
「B-R5RB」はアメリカ連合にとって重要な拠点であったため、同軍も再度支配しようと軍を進めました。
これによって、「B-R5RB」星系でロシア連合とアメリカ連合の大規模戦争が勃発。
平日の月曜日であるにもかかわらず、3,000人近いプレイヤーがこの戦争に参加しました。
※仲間から連絡を受けたプレイヤーが、会社をサボって参戦したとの逸話もある
両軍の戦いは21時間もの間続きました。
戦争中は戦艦同時の純粋な打ち合いだけでなく、スパイによる撹乱工作や賄賂による買収なども行われており、その必死さやゲームにかける情熱がうかがえます。
実際の戦争の様子 もはや何が起こっているのかすらわからない
この戦争は、互いに一進一退の攻防を見せましたが、アメリカ軍が戦略を誤った(装甲の厚い戦艦の撃沈に執着し、逆に多くの戦力を失った)ため、ロシア連合が優勢のまま、定期メンテナンスによって終結。
これによってロシア連合は「B-R5RB」を手に入れ、その後2年もの間、EVE内での最大勢力として君臨することになります。
なお、この戦争では最高級の戦艦「タイタン」(製造に現実時間で1年9ヶ月を要する)が75隻も失われ、経済的な損失は日本円に換算すると3,000万円以上といわれています。
また、この戦争によってゲーム内のチタンの価格が上昇したり、工業製品の売買に大混乱を招くなど、その後にも影響を残しました。
運営はこの戦争を記念して、破壊されたタイタンの残骸を「ティタノマキア」と命名し、モニュメント化することに。
この戦争は、「ゲームにおける最大規模の対人戦」として、今なお語り継がれています。
運営が意図したものではない、偶発的に起こった戦争ということで、非常に夢がありますね。
とはいえ、自分が1年9ヶ月もかけて作った戦艦を破壊されたら、立ち直れなくなってしまいそうです。
今後も様々なゲームが世にでてきますが、定期的に、これらのような面白い事件が起こることを期待しましょう!